【遺産分割協議】海外居住者を含む複数の相続人に連絡を取り遺産分割の提案を行い早期に解決した事案

相談前

  • 長年面倒を見ていたご相談者様の叔父が亡くなり、他の相続人は従兄弟4名でしたが、そのうち2名は海外に居住する方でした。
  • 遺産の内容は、叔父名義の預貯金のみでしたが、ご相談者様は、他の相続人である従兄弟たちと連絡を取り合っておらず、特に海外居住者である相続人とどのように連絡を取り、協議を進めればよいかご相談に来られました。

相談後

海外居住の相続人との交渉
ご相談者様は、相続人である他の従兄弟と疎遠であり、普段連絡を取っていなかったことから、連絡先もわからず、どのように遺産分割協議を進めて良いかわからない、ということがお悩みでした。
ご依頼いただき、まずは、日本に居住する他の相続人の住所を調査しました。調査の結果判明した日本居住の相続人に連絡を取り、そこから海外居住の相続人の連絡先が判明しました。その結果、全員と連絡が取れ、ご依頼者様の希望する分割案をご提案し、その内容で全員にご納得いただくことができました。

弁護士のコメント

⑴ 海外居住の相続人がいる場合

海外移住する日本人が増え、相続が発生した場合に、相続人が海外に居住する場合も珍しくなくなりました。
相続人が海外に居住する場合であっても、被相続人が日本人である場合には、日本法が適用されますから、相続人全員が日本居住である場合と同様、相続人全員での遺産分割協議が必要となります。

海外居住の相続人の連絡先の把握
もっとも、相続人が海外に居住している場合、連絡先が不明であることも珍しくありません。
この場合、本件のように、国内に居住する相続人やその他の親族と連絡をとり、連絡先を聞き出すことで判明することがあります。そのほか、在外公館を通じた調査をする、現地の調査会社を利用する、勤務先がわかる場合には勤務先に連絡する、などの方法により連絡がとれる場合があります。
しかし、どうしても所在不明で連絡が取れない場合もあり得ます。それでも相続人としての権利はありますから、その方を抜きにして遺産分割協議を進めることはできません。この場合には、裁判所に不在者財産管理人選任の申立てをして、当該不在者財産管理人との間で遺産分割協議を行うことになります(遺産分割協議が整わない場合には当該不在者財産管理人を相手方に調停を申し立てることになります。)。

⑵ 遺産分割に必要な書類(海外居住者特有の問題)

国内居住の場合の必要書類

遺産分割協議のゴールは、遺産分割協議書を作成し、それをもって、被相続人の財産を相続人に承継することです。例えば、不動産については相続登記をし、預貯金については被相続人名義の預金口座を解約・払戻しをして相続人に分配することなどです。
当該手続を行うため、通常、遺産分割協議書には、相続人の住民票(戸籍の附票)、印鑑登録証明書を添付します。

サイン証明書

海外には、一部の国を除き、印鑑証明の制度がありません。
そこで、海外居住者については、押印の代わりにサインで対応することになります。そのうえで、日本領事館等の在外公館にて、遺産分割協議書に相続人が署名した旨の「サイン証明書」をもらい、印鑑登録証明書に代えて、これを遺産分割協議書に添付します。

在留証明書

海外に居住する方については、国内に本籍が残っていたとしても、戸籍の附票にも住民票にも、海外の住所は記載されません。そのため、戸籍の附票や住民票に代わる書類として「在留証明書」が必要となります。
この在留証明書は、現地の日本領事館にて取得してもらうことになります。申請にはパスポートや運転免許証、光熱費の請求書等(現住所にいつから居住しているか証明できる書類)が必要となりますので、事前に確認することが必要です。

必要書類は金融機関によって違う場合がある

上記のとおり、海外居住者の相続手続について、一般的にサイン証明書や在留証明書が必要となりますが、金融機関により、上記以外の書類が必要な場合、サイン証明書についても様式が決まっている場合があります。また、金融機関によっては手続に慣れておらず、担当者によって言うことが変わるという場合もしばしば見うけられます。
そのため、相続人に海外居住者が含まれる場合、手続に慣れた弁護士に依頼するのも良い方法です。

⑶ 早期解決に向けて

海外居住の相続人については、上記とおり、国内居住者とは必要書類が異なり、在外公館へ行くなどの手間をかけることになります。また、委任状1つ取るにしても、郵便に時間や料金がかかります。
そのため、海外居住の相続人と交渉する際には、連絡を取る前に、遺産調査を進め、分割案を作成したうえで、可能な限り国内居住の相続人と共通認識を持っておく、相続手続に必要な書類を予め把握しておくなどして、できる限り、やり取りの回数を減らすべく、事前準備を進めておくことが早期解決につながるといえます。

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