【遺産分割調停】遺産である不動産に居住する他の相続人と交渉・調停を行い、当該相続人が退去したうえで不動産を売却し、売却代金を分配する方法で解決した事案
依頼主
男性、女性、女性
相談前
ご依頼者様は、お母様が亡くなったというところ、主たる相続財産が実家である不動産であるとのことでした。
遺産分割を行うにはご実家を売却するほかありませんでしたが、お母様の生前から二世帯住宅にて居住していた他の相続人が、全く譲ろうとしないため、ご相談に来られました。
相談後
⑴ 遺産共有状態の不動産管理の問題
遺産分割を行うには、代償金を支払っていただくか、売却代金して売却代金を分配するしかありませんでしたが、売却をするには、不動産の構造上、現在居住している相続人が退去しなければ売却の価値が大幅に下がってしまうという問題があったケースでした。
このような遺産共有状態の不動産管理の問題が本体である遺産分割協議を難航させるケースはよくあるといえます。
⑵ 調停によって共同売却を定めた解決
ご依頼いただき、複数回相手方と面談し、適正に遺産を分割するには、法定相続分にて算定をした代償金を支払っていただくか、不動産を売却して売却代金を分配するほかないことを説得し、退去をしたうえで不動産を売却する内容で遺産分割協議書を作成するところまで協議をしました。
遺産分割協議書をお送りし、返送を待っていたところ、やはり合意ができないという回答があったため、調停を申し立てました。
ご依頼いただいてから調停を申し立てるまでの間は、6か月程度であったため、このまま協議がまとまるのであれば早期解決ができた事案ですが、調停申立ての判断時期としても遅くはなかったと思います。
調停において、調停委員を通じてあらためて説得し、退去をしたうえで不動産を売却して売却代金を分配する方法にて解決することができました。
弁護士のコメント
⑴ 遺産共有状態の不動産管理の問題
相続が発生すると、遺産分割協議が成立するまで、遺産である不動産は共有状態となります。
被相続人の生前から居住していた相続人は、無償での使用貸借の合意が存在するものと一般に考えられているため、退去するインセンティブが生じないのが通常です。
他の相続人からすると、被相続人の生前から同居し、賃料を免れているということで、特別受益を主張したくなるところですが、居住する相続人からは介護などをしてきたなどの寄与分を主張されることが多く、結果として特別受益・寄与分は考慮されないことが多いといえます。
不動産を売却して分割する場合は、前提の問題として、退去の交渉が重要となります。
退去すること自体には無償で居住できるためインセンティブが働かないですが、売却代金を分配する方法であれば、退去をしたうえで不動産が高く売れると取得額が増え、全員の利益が大きくなるといえますので、粘り強く交渉をすることができたと思います。
⑵ 調停申立てのタイミング
本件では、調停申立て前に、裁判所外での交渉を6か月程度行いました。
相手方も協議に応じ、一定の理解を示していただき、最終の合意案まで作成することができましたが、結果的に署名捺印を拒否されました。
被相続人の不動産に無償で居住できるため、引き延ばしであった可能性もなくはないですが、交渉段階で論点を整理して大部分を詰めていくことができましたので、調停に移行しても無駄を少なく進められたと思います。
調停を申し立てるかどうかの判断のタイミングとしては、本件のようにおおむね6か月前後をみておくとよいかと思います。