【労働者側/建設業】【未払残業代請求】管理監督者性が争われた事案で労働審判を申し立て残業代と退職金を請求し450万円の支払を受けた事案
依頼者 男性
相談前
ご依頼者様は、勤務会社の管理職であったところ、勤務会社を退職し、退職金の支払も残業代の支払も拒否されているとして、ご相談に来られました。
相談後
(1)退職金の支払拒否
ご依頼者様が勤務していた会社には、退職金規程があり、ご依頼者様も適用されるように読めました。
しかし、会社からは、勤務形態の変更に伴い、退職金規程が適用されない勤務態様に変更され、その際に退職金が払われないことに合意された、と主張され、退職金の支払を拒否されました。
(2)管理監督者性
勤務会社からは、ご依頼者様が管理職であったことから、管理監督者に該当するとして、残業代の支払義務がない、と争われました。
(3)労働審判の申立て
前記のような会社側からの反論とそれに対する再反論を記載し、労働審判を申し立てたところ、請求額の75%程度となる450万円の支払を受ける形で、早期に和解を成立させることができました。
弁護士のコメント
(1)退職金の支払義務
退職金は、法律上支払う義務までは定められておりませんが、就業規則等に退職金制度を設けた場合には、該当する従業員が退職した場合に、規程に応じた退職金を支払う義務が生じます。
そのため、退職金が払われないというケースでは、まずは退職金の規程とその規程にご自身が該当するかを確認することが必要です。
(2)退職金の不利益変更
退職金規程が適用されないことに合意した、という会社からの反論は一定数あり得るところです。
このような退職金を含む給与等の不利益変更は、従業員の個別の合意があれば出来得るところです(労働契約法8条)。
しかしながら、従業員にとって最も関心事である給与等の労働条件を引き下げる合意は、本当に合意するのかどうかという観点から慎重に検討されるところであり、会社側から合意をした証拠が十分用意できないこともよく見られます。
本件においても、明白な同意書などはなく、不利益変更には同意していないということを前提にできたものと考えられます。
(3)管理監督者性
一定の地位にあった労働者が残業代請求を行うと、会社側から、管理監督者性の反論がなされることも一定数見られます。
管理監督者とは、労働基準法41条2号の「監督若しくは管理の地位にある者」を指すところ、労働条件の決定その他労務管理について経営者と一体的な立場にある者をいい、役職名ではなく、その職務内容、責任と権限、勤務態様等の実態によって判断されます(厚生労働省・労働基準法における管理監督者の範囲の適正化のために参照)。
一般に、いわゆる管理職程度では法律上の管理監督者には該当せず、会社側からの主張による管理職よりも極めて狭いといえます。
このような管理監督者を主張される場合には、これらの要素をしっかり検討すべきです。
(4)労働審判
労働審判とは、原則として3回以内の期日で審理を終え、迅速な解決が期待されている手続です。
期日の入り方も訴訟手続よりも早く入りますので、早期の解決が望めます。他方で、労働審判に異議がある場合には、異議申立てをすることができ、訴訟手続に移行してしまうため、使用者・労働者間で合意ができる見込みが一定程度ある必要があります。
残業代を含む賃金の請求にて交渉では合意できない場合には、労働審判・訴訟の手続がありますので、メリット・デメリットを考慮し、適切に選択していく必要があります。
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