婚姻費用・養育費の算定方法が変わる?日弁連提言「新算定方式」とは?
婚姻費用・養育費をいくら請求できるか、あるいは、いくら支払う義務があるか、などという法律相談を受けることがあります。
今回は、婚姻費用・養育費の新算定方式について、ご説明します。
婚姻費用・養育費とは
婚姻費用とは、夫婦の共同生活において、財産、収入、社会的地位等に相応した通常の生活を維持するために必要な生計費をいいます。養育費とは、未成熟子が独立の社会人として成長自立するまでに要する費用のことをいいます。
ざっくりいうと、離婚により配偶者の生活保持義務がなくなるため、離婚までの生活費(配偶者の生活費を含む)を婚姻費用、離婚後に監護親が子どもを育てるのに必要な生活費を養育費といいます。
現在の実務ではどのように金額が決定されているか
現在の実務では、平成15年4月に発表された「簡易迅速な養育費の算定を目指してー養育費・婚姻費用の算定方式と算定表の提案—」(判例タイムズ第1111号)の「簡易算定方式」(以下「現算定方式」といいます。)を一定の基準として運用されています。
この現算定方式は、裁判所のホームページからも閲覧することができます。子どもの人数・年齢と夫婦の収入を比較すると、簡易迅速に養育費・婚姻費用を算出することが可能となっています。
もちろん、個別具体的な事情に応じて、特別費用や住居費の負担等を考慮することはありますが、実務では基本的には現算定方式の金額をベースに決定されています。
日弁連提言「新算定方式」
日弁連は、平成28年11月30日、新算定方式・新算定表の提言を公表しました。
新算定方式は、日弁連のホームページから確認することができます(「新算定表早わかりガイド」)。
従来より、子どもを育てている監護親にとって現算定方式による養育費は低すぎるという見直しの声もありました。これらの批判を受け、新算定方式によると、現算定方式と比較して、養育費の支払い額が1.5倍程度に増額する見込みであるとのことです。
現段階では実務に定着している印象はまだありませんが、お子さんを育てている監護親(特に離婚前は主婦であったシングルマザーなど)には強い味方になる可能性があります。
他方で、一般的な家庭の婚姻費用・養育費の支払義務者(一般的にはサラリーマンのお父さん)は、現算定方式でも別居により二重の生活費がかかり、手取り収入から婚姻費用・養育費を支払うと、自身の生活費が圧迫されて苦しい印象はあります。
新算定表方式には、まだまだ賛否両論ありそうです。