相談前
ご相談者様は、自転車で横断歩道を横断しようとしたところ、赤信号無視の左折車と接触して転倒したという事案であり、事故による後遺症としてPTSDや事故現場付近からの転居費用などを請求したいというものでした。相手方損保はこれに応じず、交渉が長期にわたっているということで、ご相談に来られました。
相談後
事故による後遺症としてのPTSDや転居費用などは事故態様やその後の状況からして認められる可能性が低いこと、他面で、事故から長期間経過しており、訴訟中で弁護士費用や遅延損害金を調整金として増額し、最大限の増額を図ることでご納得いただき、無事解決することができました。
解決が長引いていたのは、以前に相談されていた法律事務所から、ムチウチ症状(後遺障害14級9号)の労働能力喪失期間の終期が67歳と誤った説明を受け、逸失利益額の請求が過大となってしまっていていたことも一因としてあったようです。
弁護士のコメント
(1)後遺障害による逸失利益
後遺障害による逸失利益とは、被害者が後遺障害を残し、労働能力が減少したことにより失った将来得られるはずの利益の減少を指し、消極損害に分類されます。
逸失利益は、症状固定時以降の期間について認められます。症状固定以前は、休業損害として認められます。休業損害は、後遺障害が残存するか否かにかかわらず、事故による通院等により休業を余儀なくされる場合などに認められ、逸失利益は、後遺障害が残存してしまったことが前提となります。
後遺障害による逸失利益は、「基礎収入×労働能力喪失率×喪失期間に対応するライプニッツ係数」によって算出されます。
労働能力喪失率や労働能力喪失期間は、一般に、後遺障害等級によって算定されています。
ライプニッツ係数というのはわかりにくいですが、逸失利益を一時金払いを受けるとき、将来にわたる逸失利益総額を現在価額に換算するため、中間利息を控除するものですが、労働能力喪失期間に対応したライプニッツ係数はすぐに調べることができるため、このようなものがあるという理解でよいかと思います。
(2)ムチウチ症状(14級9号)の労働能力喪失期間
本件でもご相談者様が以前に相談されていた法律事務所において誤りがあったように、ムチウチ症状(14級9号)の場合の労働能力喪失期間については、誤解が生じやすい点なので、注意が必要です。
一般に労働能力喪失期間の終期は、67歳とされています(被害者の年齢・職業・健康状態その他諸般の事情により異なりますが、おおむね67歳とすることで実務上定着しています。)。
しかしながら、ムチウチ症状の場合は、14級の場合に5年、12級の場合に10年に労働能力喪失期間が制限されることが実務上一般的といえます。このような制限の理由としては、後遺障害が軽微なもので慣れによって労働能力を回復する可能性があるというものですから、具体的な状況次第では必ずしも決まった年数ではありません。
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